コミュニケーションの基本は共通言語
最初にコミュニケーションの話をさせてください。コミュニケーションは主導権は受け手にあります。そのため、相手の立場に立ってコミュニケーションを行うことが大事と言われる所以です。そのコミュニケーションを取るときにポイントになるのが共通の認識をしてるかどうかです。今回の場合は、言葉の定義がしっかり決まっており、それが共有されているかという点です。
言葉の定義を統一させることがリスクを減らす第一歩
例えば、「取引先」という言葉で何を指すでしょうか?人によっては、販売担当であれば「得意先」でしょうし、購買担当であれば、「仕入先」になるでしょう。マスター管理で言えば「得意先」「仕入先」両方を指すかもしれません。「スバル」と言えば?「ポート」と言えば? などなど。大抵は会話の流れで、言葉が何を指すか理解できます。しかし、会社独自の言葉は理解するのが難しいですし、理解したとしても、理解が不十分の可能性が高いです。特に要件定義フェーズでの言葉の間違えは後々、致命的になります。
そういったリスクを回避低下させる上でも用語集は非常に大事なのです。用語集のよいところはほかにもあります。いくつか下記に列挙しておきます。
- ミスコミュニケーションがなくなる
- 新規メンバーの加入時の基礎知識の教授
- 業務が可視化される
用語集の作り方
用語集を作成するときに悩むのが、何ですか作成するかです。まだ、用語集がない企業の方は、Excelでよいと思います。Wordでもいいです。正直、何でもよいです。書き込みしやすいほうがよいとか、検索しやすいほうがよいとか、同時に書き込めないとか、バージョン管理が難しいとか、不便な点を挙げれば、きりがないです。まずは用語集が存在する文化とメンテナンスする文化を根付かせるほうが大切です。
最低限、必要な項目は下記です
- No
- 用語
- 読み方
- 用語の説明
- 登録日、更新日
- 登録者、更新者
最初は少ないほうがよいです。書き込む項目が多いと誰も書き込まなくなります。まずは簡単に初めて、そのあとで用語集を育てていく感じで進めるのが、おすすめです。
運用ルールとメンテナンス方法
用語集のフォーマットが完成したら、運用ルールも決めましょう。社内SEの方で、一人しかいない方は、スタンダードなやり方では一日一用語がおすすめです。他には、障害が発生したらそれに関連する用語を記載する、問い合わせがあれば用語集に記載する、など何かしらのきっかけで記入することをおすすめします。思いついたら書く、というのが一番NGな運用ルールです。なぜなら長続きしないためです。社内SEが数名いたり、仲の良いメンバーで用語集作るときは、ゲーム要素をいれるのがおすすめです。しりとり形式であったり、クイズ形式にしたり、用語を書いてその解説を別に人に任せるなど、工夫次第はいろいろな人を巻き込むことができます。ただし、メインは業務のですので、そちらがおろそかにならないように注意してください。
ちなみに用語集に記載する基準ですが、とにかく記載することが大事なので、なんでも記載するというのが一番おすすめです。上司に用語集を作りたいと相談すると、上司がルールを設けるので、業務に関連することしかかけず、固くなりがちです。基本的な用語の説明の後に、「このシステムはよくトラブルが発生する」や「○○と△△が違いがわからない」「これについて××さんが一番詳しい」と感想のような説明分を記載するのも大事です。
用語集を、次期基幹系システムでどう活かすのか?
新規メンバーに読んでもらいましょう。新規メンバーとのコミュニケーションが飛躍的にしやすくなります。また、それによりストレスもなくなります。「こんなことも知らないの?」というのがなくなります。新規メンバーが意味を理解せずに、仕事をこなすことによりミスが発生することも減ります。
次期基幹系システムでは、 RFPを出すベンダーにいっしょに用語集も渡しましょう。ベンダーとは秘密保持契約書を結ぶと思いますが、機密事項はあらかじめ削除しておきましょう。受け取ったベンダーとの意思疎通がやりやすくなるのは当然ですが、社内の文化やどのようなシステムがあるのかベンダーがイメージしやすくなります。また、ベンダーも仕事がしやすくなので、お互いによいことばかりです。

地道な用語集の作成が、次期基幹系システム再構築プロジェクトの成功率を挙げる第一歩です